礫・砂・泥

 

 水槽は管理しやすいように,あまり細かい粒の石を入れません.底砂の掃除を考えたとき,ゴミが舞い上がりやすいのを利用して行います.舞い上がってしまうような砂の中のゴミを掃除することは困難であることが分かります.これが,私の思う”不自然”の根本だと思います.岩石の話をご理解いただいた後で,水中における砂泥や礫の挙動について考えてみましょう.水の中でたまる石...つまり堆積岩になる前の堆積物の段階です.英語ではsedimentと言います.

 単純化するために,今,ある池の中に川が入り込んでいると考えます.この川から運ばれた堆積物が池にたまるわけです.では,たまる物は(つまり堆積物は)どこで作られるのでしょうか?大きな岩体つまり山から運ばれてきます.この様な物質の供給源を専門用語で後背地と言います.砂の種類はこの後背地によって決まると考えても良いでしょう.例えば,花崗岩の山から運ばれてくる砂は,石英などを主体として,白っぽい砂ができるでしょうし,後背地に塩基性岩があれば,黒っぽい砂がたまります.海岸に行っても,砂浜の色が場所によって違うことがおわかりいただけると思います.これは,もともとの岩石が違うのです.この様に考えると,砂の採取に行こうと思ったときに,その砂浜に注ぎ込む河川の様子を十分に把握できれば好みの砂が採取できます.

 今度は均一の後背地を考えます.例えば,大磯の砂利のような物が池に流れ込みますが,川にいるときはどんどん流されてしまうような粗いものも,流れが止まるとたまります.簡単に言えば,川の方では石の大きいものがありますが,池に入ると細かいものがたまりだし,さらに河口から離れると,もっと細かいものだけが運ばれます.この粗い細かいと言う違いを粒度と言います.つまり,堆積物というのは粒度という概念で分類できるわけです.

 ここまでご理解いただけますと,礫・砂・泥の違いがお分かりいただけるものと思います.礫は粗いいわゆる”石”の状態,砂は少し細かく”砂利”の状態,泥はもっと細かい状態です.専門的には,この3者の分類は2mmと1/16mmで行います.2mm以上の石は礫と呼び,1/16mm以下の石は泥と呼び,その中間が砂なのです.良く,砂と呼びながら,全く違うものを間違えて指している場合もあります.気をつけましょうね!水槽にひいている底砂と言うのは,2mm以下のものを使っている例は少ないと思います.そう考えると,分類上では砂とは呼びません.

 では,自然界において,何がこの粒度の違いを作るのでしょうか?前にも書いたとおり,流れです.海岸で砂を見てみましょう.粗い砂があるところと,それが細かくなっているところと分かれているのが見えます.この現象を淘汰と言いますが,波のエネルギーが石を淘汰して,ある場所に粗いものを,一方に細かいものをためているわけです.もし,ほとんど流れていないような環境では,自然界において粗い砂,あるいは礫がたまることはありえません.水槽という環境を考えたときに,川に匹敵するような流れのある水槽というのは,極希です.普通は池の中の環境の再現ということになります.その時に,粗めの砂を入れても自然には見えません.

 これが”不自然”観をもたらしているものと考えます.しかし,水槽環境下で,自然な堆積物の状態を作ることは,先ず不可能でしょう.底砂までもオブジェとして扱える水槽ってあるんでしょうか?何かアイデアがありましたら,是非,教えてください!