KO井戸を掘る

 2005年7月17日意を決して井戸掘りにチャレンジしてみようと考えました.

きっかけ

 最近はあちらこちらで自然災害が起こっています.これは,地球の歴史からすればたいした事件ではありません.例えば,数十cmの火山灰が降った記録なんてざらにあるわけですし,スマトラ沖で発生したような大きな津波の痕跡も日本でもたくさん見つかっています.台風などの洪水だってこれまでの経験値は十分だとは言えませんし,巨大隕石の衝突だって地球は経験してきたわけです.地震に対して各メーカーがいろいろと対策をしていますが,残念ながら本当の地球の歴史を知って,その対策を考えられる人なんていません.これは,はっきりと断言しておきます.簡単な例ですが,耐震構造にすれば,ある程度の震度に耐えるような建物を作れますが,スマトラ沖で経験したような数十mの波高の津波によって何が起こるかは考えていないと思います(そこまで考えるメーカーもありません).今回の大惨事がもの凄い教訓を残してくれていますが,喉もと過ぎれば熱さを忘れてしまうのが人間の悲しいサガです.
 大都市圏での大地震などに備えて考えること,重要なことはなんでしょうか?私は災害が起こったあとに何をすべきかをきちんと把握することだと思います.その一つは水の確保です.

 もう一つの理由は大地を知ること,そして子供たちを大地の恵みの中で感謝する心を養おうと思ったことです.最近の子供たちは,蛇口をひねれば水は出てくるものと思っています.自分の家の下に水が流れている(であろう)と言うことを実感させてあげたい.そして,何に気兼ねすることなく水遊びをさせてあげたいし,それで学べるものがたくさんあると思ったからです.

作業

 先ずはお得意のネットでいろいろと調べるところからやりました.井戸の堀方だけでなく,地質についても,地下水の有無についても調べてみました.これは,とても重要な作業です.昔,実家にも井戸があり,それは祖父が自分で掘ったと聞いています(現在はもっと深い井戸を業者に掘ってもらった).実は大きなひょうたん池もあり,それも自作したと聞いています.何でもできたんですね.私にはとても,大きなものが作れませんので,小さく作ってみることにしました.土地の広さもありませんので,ちょうど良さそうです.そこで調べたのが打ち込み井戸と言う方法でした.これは,細く井戸を打ち込むには適していて,しかも皆さん自分で達成しているらしいことがわかりました.

最も参考にしたのは「自分で出来る打ち抜き井戸の堀り方」と言うページです.ここのリンクからいくつか有用な情報を得られました.

地層の様子を調べる

 これは,ある程度の知識が必要かも知れません.飲み水に使うのならば,水質についても同時に調べた方が良いでしょう.しかし,当面は庭の水遊び,災害時に生活できる水が確保できると言うのを目的としていますので,水が出ることさえわかれば良いと考えました.そこで単純に透水層と不透水層に分けて地層を見ます.一般論で言えば,粘土質の地層は水を通しません.これが不透水層であり,逆に砂がちな地層は水を含んだ地層になり透水層と言えます.不透水層の上に水がたまっていると考えれば良いわけです.堆積物の場合には,不透水層と透水層が繰り返していると言うイメージです.そこで,住んでいる地域の浅層部の地質を調べてみます.当然地域によって違いますので,ご自身の地域については,調べてみてください.わからないあるいは知りたいことがあれば,掲示板にでも書き込んでください.

 この辺は,下総層群と呼ばれる地層が広く発達していると考えられています.その上位には関東地方で広く発達する関東ローム層が覆っていると考えられます.関東ローム層は赤茶色い泥質の堆積物ですが,水が通り抜ける性質を持っているそうです.下総層群について,特に最上部は木下累層と呼ばれる砂岩を常総累層が覆っています.常総累層は砂岩・シルト岩や炭質物を含んでいますが,最上部は常総粘土と呼ばれる地層が覆っています.層厚約2m弱の泥の層が不透水層になっていることは知られています.つまり上位から見ると,関東ローム層の泥質堆積物が約2mで,その下位が常総粘土層(これも2m弱)その下約3mはやや細かい砂層が続き,それより下位では粗い砂層(木下累層)に変わると考えられます.単純に考えると2m掘り進めばある程度の水は確保できるかも知れません.しかし,浅層の水は,雨水などがたまってそのままになっていて,十分な水が確保できない可能性が高いと思います.よって,今回の目標はその下の粗目の砂層(目標深度約8m)を設定しました.ここまで掘れば,約4m近いところに水頭が来ると考えています.

 掘り終えての,どうなっていたかのイメージです.上の方から掘っていくとこんな感じで変わっていったと思います.実際の地層名や細かいところは微妙に違うかも知れませんが,お許しください.

道具

 先ずは井戸掘りの目標値を設定できました.そこで,井戸の仕様を決定して道具を買うことにします.

 先ずはこんなものを買ってきました.取り敢えず,塩ビ管も入れて全部で7500円くらいです.

 これは50ミリの塩ビ管です.上に紹介してあるHPでは,2種類の方法が載っていますが,ここでは水を使わない方でやってみます.掘る作業自体は,思いの外できることがわかりました.上の地層の並びでも分かるとおり,あまり粗い砂や礫がこの辺には無かったのが良かったのでしょう.また,HPでは,金属のパイプで崩して,それを泥水状にしたものをこの道具で吸い上げるのが基本です.私は,面倒だったので,この塩ビ管でつつきながら,泥水もあげるという方法で行っています.しまった泥(やや硬い泥岩層)にはほとんど通用しませんでした.時間をかけて,掘っています.

日記

7月16日 計画実施 取り敢えず,道具を買ってきました.特に2m塩ビパイプは長いので運搬も大変です.置いておく場所も考える必要があります.

7月17日 実際に穴を掘ってみました.最初のうちは簡単に掘れます.実は,弁がうまく固定できずに,取れてしまいました.しかし,弁がなくても泥が詰まるため,ちゃんと掘れていきます.はじめは2ミリのゴムシートで弁を作りましたが,弁の厚さは1ミリの方がうまく扱えるようです.

 取り敢えず,どんなものを作れば良いかイメージできる図面を書いてみました.汲み上げた泥水を地上まで運んでこられれば良いわけです.上にあるHPなど参照にしてみてください.この弁がとても大事だと思います.あと,泥の層など硬い場合には,この先に金物を取り付けて,ぐりぐりと掘っていければ意外と進んでいきます.

 掘ったあとはこんな感じです.ブロックは穴に物が入らないように設置しました.今日のハプニングは子供がペットボトルを穴に入れてしまったことです.

7月18日 落としてしまったペットボトルについて,竹の棒で何とか拾うことが出来ましたが,今後,深くなるとそう簡単にはいきませんので,注意が必要です.250センチまで掘り進みましたが,急に掘りにくくなりました.岩相が急に変わったようです.関東ローム層の基底までたどり着きました.予定より26センチくらい浅いようです.おそらく,整地したときに少し削ったものと考えています.

7月24日 急に掘りにくくなったので,道具に金具を付けることにしました.弁の件もあるので,今回完全に作り直しました.工夫しながら金具を取り付けました.それで泥岩を崩しながら進んでいきます.290センチまで進んでいます.

7月27日 今日は2時間ほど穴を掘りました.金具を取り付けていた3mmのネジが折れて,金具自体を穴の中に落としてしまいました.落としてしまった金具を拾おうと努力しましたが,結局うまくいきませんでした.少し穴をまわりに広くして,おそらく金具の横を抜いているように思えます.もう少し深くなって拾えるかどうか検討してみます.310センチまで進んでいます.

7月31日 約1時間ほど作業をしました.概ね,330センチまで掘りましたが,またしても金具が動いてしまったようです.このままこの場所で掘るべきかどうか思案中です.ところで,はじめにも書いたとおり,この地点で約2mのところまで水がたまっています.これもほぼ予定通りと言えます.唯一の失敗は金具を落としたことでしょう.これがなければ,もっと作業がはかどっているものと悔やまれます.

8月6日 250ミリの塩ビ管のみを入れて,金具の救出を試みましたが失敗でした.3ミリ,4ミリのネジを曲げてしまいました.これは断念した方が良いかも知れません.380センチまで掘りましたが,どうしても金具は取れません.砂の層まではおそらくあと20-30センチと考えています.水は得られているので,この辺で井戸側を差し込んで,取り敢えず井戸の形にしてみようと考えました.

8月7日 と言うことで,ガチャポンと呼ばれる手動のポンプを設置してみました.

ガチャポンの購入先は楽天市場です.楽天市場では別にもガチャポンが売られていますが,なるべく安いところで購入しました.台付きのもありますが,値段が高いので,打ち込み式と言うのを買っています.

【送料無料】なつかしの井戸ポンプ水道ポンプ(通称 ガチャポンプ)

因みに,都築屋本舗さんはDIYツールもたくさん売っています.園芸用品もいろいろ置いていますので,一度,立ち寄ると良いと思います.ガチャポンの発注後,すぐに商品が届きましたので,安心してお願いできるお店だと思います.

8月8日 うちのポンプの様子です.取り敢えず,仮おき状態です.

 汲み上げは出来るのですが,泥水です.ある意味,予想はしていましたが,しばらくどうなるかを見ながら検討が必要です.

8月14日 あまり,進みません.まだ完成ではありません.泥水の吸い上げが多いので,25mmの塩ビ管の底を少しあげるつもりです.同時にガチャポンのまわりも少し石を入れてあげようと思います.たぶん,9月か10月くらいにもう少し作業を進めたいと思います.

2007年 4月になりました.そろそろ完成させるかどうかをきちんと考えないといけませんので,先日,少しだけ掘り進んで見ました.この間,約2年,ガチャポンは泥を噛みすぎて気密が落ちてしまいました.パッキンを買い直す必要がありそうです.それから,上の写真のような固定ですので,塩ビ管が折れてしまいました.子供がだいぶ遊びましたので,仕方ない感じです.さて,穴掘りについては,現在,約450cmくらいまで掘れています.ここでは,泥の層を抜けているようです.上がってくる堆積物が少し粗くなり,砂が主体になっています.井戸側のパイプは2m管を2本分(ほぼ4m)埋まりました.と言うことで,井戸側と,掘っている深さの間(4mと4.5mの間)に,地層境界を捉えているようです.そのために,粘土を引っかいているんですが,主体は細粒の砂になりました.これは,粘土と砂の互層かも知れませんが,少なくとも2mの粘土層は抜けたと考えて良さそうです.井戸側のパイプをもう少し奥に入れ込めるかどうか,これがこれからの課題です.まあ,暑くなる前に頑張ってみたいと思っています.

5月13日 現在,5m程度まで掘り下げました.4.5mくらいで止まってしまいましたが,その後,少しパイプの先を変えることによってまだ掘り進られる事を確認しました.ただし,井戸側のパイプが止まったままです.4mまで入ってそれから動きません.ここで2つの手を考えました.井戸側を無理矢理押し込むのか,それとも,中を少し掘り出すかです.たぶん,前者のみが効果的と思われます.

5月26日 いよいよ5月も終わります.先日,大きめのカケヤ(木槌)を購入し,上から井戸側をたたきました.思った通り入っていきました.しかし,ここで注意があります.井戸側の塩ビ管だけだとたたいたショックで塩ビ管がもちません.割れが入ってしまったので,塩ビ管のコネクターを先に付けて,塩ビ管のショックを和らげました.現在,6.5mは掘り進みました.井戸側は6m入りました.人力では,4m以上は難しいと思われます.現在の岩相は中粒砂程度で,非常に淘汰の良い砂です.粗粒砂が出るまで(予定深度まで)あと1.5m程度です.

5月27日 長く作業すると体が持ちませんので,1日2時間程度にしています.本日も,昨日の続きを行いました.掘り進んだ深度は6.5mからスタートして,最後は約7-7.5mに到達しました.昨日は中粒砂でしたが,本日はもう少し細粒になり,砂質泥岩(シルト)程度の粒子です.これも,事前に調べた通りの展開ですので,あと50cmくらい掘り進めば予定の粗粒砂岩の岩相に到達すると考えています.井戸側に関しては7mまで延長しました.あと1mで始めに買った8mの塩ビ管がすべて埋まることになります.どこまで延ばすかは,水位ではなく岩相で決めるつもりです.粗粒砂岩の岩相に到達できれば,4mの水位を常時確保できると考えています.落としてしまった金具はもしかすると,井戸側の外にかわせた可能性がありそうです.むしろ,塩ビ管のつなぎ目が,掘るときのツールに触れて,時々スタックするような状態になります.最近,掘っているときに,ツールがどういう状態になっているのかを想像できるようになってきました.いずれにしても,あと数回の作業で掘り進む作業は終わるかも知れません.

6月3日 本日も数時間の作業をしました.取り敢えず,深度8.2mくらいに達し,井戸側も8mを入れました.現状ではまだ粗い砂層に至っていません.予定では7.8mくらいで到達と思っていたので,ちょっと残念!あと50cmくらいは掘り進める予定です.もう庭には蚊が出る季節になったので,作業をしつつ蚊の退治もしました.今日はある程度掘って,ガチャポンで吸い上げようと思って,セットしてみましたが,たぶんピストンの木部が乾燥して縮んでいるため,吸い上げないようです.取り敢えず,ここを水に浸しておくことにしました.

6月10日 昨日と本日は1,2時間ずつ作業をしました.1つはガチャポンを使って,水を汲み上げてみる作業.その次は穴掘りツールで底をきれいにする作業.これをやりながら井戸側をたたき込んでいきました.水の汲み上げ作業は泥混じりの砂を大量に汲み上げました.子供と一緒に泥まみれになりました.そして,ついに粗い砂の層に到達したようです.粗い砂をすくい上げられたのはほんの少量ですが,間違いなく粗い砂が出てきました.予定深度よりは深かった気がします.穴の到達深度は約9mで井戸側の深度は約8.9m(9mの75mmパイプの頭が少しだけ地面から出るまで打ち込みました)です.ここで穴掘り作業を終わることにしました.水頭は地面から3,4mのところにありますので,少なく見積もっても5mは水が貯まっていると思います.この時期だから多少高めとは思いますが,これで十分でしょう.あとは,パイプ内への水の供給が十分かどうかにかかっていると思います.

6月24日 穴掘り作業は完成にして,井戸の汲み上げ部分を少し作っています.それにしても,大作業になったものです.井戸の立ち上げ部をそのままにして,何かあったときに作業が出来るように工夫しました.

7月8日 井戸の固定をブロックでしました.まだ,写真は出せませんが(笑),こんな感じで固定して見ました.

 重要な点は,井戸側のパイプの位置を,図面のようにガチャポンの位置とずらしたことです.それによって,どちらかの管理が可能になると考えています.ただし,塩ビ管は一度GL(グランドレベル)から下がりますので,あまりお薦めはしません.1年くらい使ってからの,感想の方が大事でしょうね.あと,フート弁を買ってきました.これは,水の吸い込み口に付けるタイプのもので,吸い込むときには弁が開き,逆に水が落ちようとするときには弁が閉じますので,ガチャポンの水が抜けません.たぶん,一昨年ガチャポンを使っていたときには,水が落ちていきませんでしたので,気密性が維持されているうちは,ガチャポン本体でも水の落ちを抑えていられると思います.現状ではフート弁がついていないと水が落ちてしまいます.フート弁(逆支弁とか止水弁)は,長くガチャポンを使うにはとても良いと思います.一応,フート弁は下記のURLで購入できます.私は別のホームセンターで買いました.お近くの方なら,ご相談ください.

8月20日 レンガを使った排水の方も徐々に完成しつつあります.いずれ,写真で紹介できる日も来ることでしょう.レンガ積みも何となく億劫でなくなって来ました.始めに庭造りをしたときには,イマイチうまくいかなかったのですが,徐々にコンクリートの作り方も自分なりにやっていて,こんなもんかなーって感じです.井戸の方は,水量はこの季節でも十分です.バケツで数杯分を一気に出しても,かれる感じはありませんので,まさに,予定通りというところです.唯一の問題はまだ砂を吐き出しているところです.砂と言っても,淘汰の良い細粒砂と,それが出てくるときには泥が混じる感じです.それも,くみ出しを長く続けていると出てくるので,まだ底に砂が溜まっているのか,それとも井戸側から,砂が入り込むような感じなのか,今のところ判断できません.

まとめ

作業手順

1.地質状況の調査

 個人的には最も重要な作業と思っています.例えば,近所に掘削のデータがあれば,絶対に参考にすべきと思います.何故ならば,これを指標に頑張れるからです.また,ご自身の土地がその状態であれば,基盤調査を実施するよりも確かな情報であるからです.堆積層であれば,粒度と色だけ気にしてください.粒度は帯水層を知る重要な情報ですので,掘り上げたもの層準の違う物を自分の目で比べて見てください.

2.穴掘りツールの作成

 皆さんのHPを見ながら似たものを作成すれば良いと思います.石(礫サイズ)が出てこない限りは,2種類でいけると思います.1つは,通常のツールと,泥岩を壊すためのツールです.なお,金具など落とさないように注意すること!

3.作業開始

 先ずは,手で少し掘りながら,地下の状況を調べます.運が悪いと造成地でいろいろなヘンな物が出てくるなんて事もあるかも知れません.ある程度の穴になってきたら,穴掘りツールを使い出します.始めのうちは少し水を入れるなど,軟らかくしてからやるのが良いと思います.少し進めば水が出てきます.始めてしまえば,意外と進みます.私の場合は,2mの塩ビ管(25mmのもの)で掘り進めました.だいたい,ツールを付けて,3mくらいが始めの道具です.これに2mずつ足しながら作業していきます.その際には,塩ビ管同志をネジ締めする道具が便利です.オスとメスで100円少ししますが,どうせ後ほど使うものなので,高くはありません.

4.井戸側挿入

 ある程度まで掘ると壁面も不安定になると思いますので,井戸側を挿入します.私の場合は75mmの塩ビ管を入れていきました.なお,状況によって違うと思いますが,人力で挿入できるのは4m程度まででした.その後のパイプは,上からたたきました.

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